ロベルト・シュナイダー


眠りの兄弟 鈴木将史 訳・三修社 刊
画像クリックでamazonへ 『眠りの兄弟』(bk1)

従妹エルスベートへの報われない恋を胸に、二十二年という短い生涯を閉じた天才音楽家エリアス・アルダーの物語。
出てくる人物が何処かしら不幸で報われない分、個人的には主人公に対する同情の念が湧きにくかったのですが、 そんな中で思わず同情してしまったのは、エリアスの従兄弟で親友のペーター。彼はエルスベートの兄でもあります。
幼い頃から異端児として疎んじられていたエリアスの傍にいて、唯一の友人だったペーターは暴力的な性格ではあるものの、 常にエリアスを気にかけていました。
その関心の有り方が少々常軌を逸しているのでは…と思い始めたのは十一章目あたりから。 妹とエリアスとその弟が散歩しているのを尾行してたんですよ!
はじめは妹にちょっかい出されると困るからかと思っていたのですが、先を読んでいくとどうも何か違う…。 どういった意味合いで執着してるんだペーター!とはらはらしながら(笑)読み進めていきますと、 個人的クライマックスである十五章目でとうとう真相が明らかに。あんな風に云われちゃあ立つ瀬がないよ。ペーター、気の毒に。
それでいて、「(中略)僕は君を裏切らなかったよね。だから今度は君も僕を裏切らないって約束してくれよ。 これから後に起こることはみんな、死ぬまで君の胸にしまっておくって誓ってくれ!」なんて殺し文句を云われちゃうしね〜。
粗野で暴力的なペーターにしても、寡黙な芸術家のエリアスにしても破滅型なのは同じなんだよなぁ。
友人であり共犯者でもあったエリアスとペーター二人の物語として楽しんでしまいましたが、やっぱり読み方間違ってますか(笑)。
はっきり云いまして、ひとりずつだとこの二人を好きにはなれないのですけども(もともとあまり好きなタイプでない。 エルスベートもあんまし…)、二人まとめてだと何だか見ていて切ない様な気にさせられます。 エリアスが音楽だけに執着できていたら幸せだったんだろうな。
後味の良い話ではないんですが、印象的でした。

(2002/04/09)


海外作家INDEXへ