小野不由美


●くらのかみ
『くらのかみ』(bk1)

四人で始めた「四人ゲーム」が終った時、子供達は五人に増えていた。 五人だった筈はないのに、皆見覚えのある顔ばかり。

遺産相続と本家の後継者選びの為、呼び寄せられた大人と共に古い屋敷にやって来た子供達。そこは行者の祟りと座敷童子の守りがあると云われている場所だった。 親戚一同が集まり、次期当主の選出が行なわれる中、後継者候補の食事に毒が混ぜられる事件をはじめ、様々な怪異が起こり始める。これは行者の祟りなのか、それとも──? 自分の親達を守る為に、子供達(含む座敷童子)は真相を探りはじめるのだが…。

本を手に取ってめくってみたらば、「うわ〜、何か懐かしい感じ!」と大喜び。 二色刷りの本文挿絵とか、布貼りの背表紙とか、昔子供だった人達が夢中で読んだ本の装釘を再現してくれているのかな。 クラフト紙の箱も素敵なので、買わない方も書店で手に取って眺めて下さいまし。 ステッカーの文句はどうかと思うがな(“宴の支度は〜”ってさぁ…)。
そしてそして。表紙と挿絵が村上勉さんなのですよ。
村上さんと云えば佐藤さとる作品、特にコロボックルシリーズで思い入れがある為(こういう方絶対多いですよね!)、 そういった部分でもハートを鷲掴みにされましたさ…(笑)。
小野さんが書く児童書ってどうなんだろう…とちょっとどきどきしながら読んでいたんですが、 心配無用でした。子供の頃読んだ本のわくわく感がそのままスライドしている感じ。
座敷童子は誰なんだろう、犯人は誰なんだろう…と子供向けミステリシリーズを楽しんでいた感覚が鮮明に戻ってきて良かった〜!
道具立てとしてはいっくらでも怖いものが書けそうな印象なのですが、小野さんが本気を出したら、 子供はおろか大人だって半泣きになりそうな作品に仕上がる事は間違いないと思われますので(笑)、 お子様も読めるレーベルとしてはこの辺が妥当なのかな。
ホラーではなく、あくまでミステリの方に重点を置いているからなのかもしれませんけれど。
欲を云えば大人側の事情も別の作品として読んでみたいです。これってやはりファンのわがままかしら。

(2003/08/10)


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