●光の帝国─常野物語 |
![]() 集英社文庫 刊 特殊な能力を持つ常野(とこの)一族を巡る物語。 |
●蒲公英草紙―常野物語 |
![]() 集英社 刊 自分が幸せであった時期は、その時にはわかりません。こうして振り返ってみて初めて、
ああ、あの時がそうだったのだと気付くものです。人生は夥しい石ころを拾い、背負っていくようなものです。
数え切れぬほど多くの季節を経たあとで、疲れた手で籠を降ろし、これまでに拾った石ころを掘り起こしていると、拾った石ころのうちの幾つかが小さな宝石のように輝いているのを発見するのです。
そしてあの幾つかの季節、あのお屋敷で過ごした季節が私にとってその宝石だったのです。 恩田さんの作品がいつもどこかノスタルジックなのは、過ぎ去った出来事を美しく切り取って語る手法が巧みだかならなのかなと引用部分を読んで感じました。 内容に関しては下手に色々書くとネタバレしそうなのでちょっとだけ。 恩田さんの作品の全てを愛する熱烈なファンとはとても云えないワタクシですが、常野一族はやっぱり好きだなぁ。穏やかな佇まいと不思議を纏っていながら、ふうわりと心の中に入ってくるような人たち。 ラストはちょっとばかり座りがよろしくないかなぁと思わないではないのですが、常野一族に再会できた喜びが大きかったのでまぁいいかと。 |