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1162年のスコットランド。
ノルマン貴族とスコットランド氏族の娘の間に生まれた少女ジェニーに、思いもかけず王弟ウィリアム伯との縁談が持ち上がる。しかし、ジェニーは森で出会った謎めいた青年タム・リンの存在を忘れられず……。
Lady Isabel and the Elf-KnightとTam Linのふたつのバラッドを元にした物語です。
幻想味が強いのかと思っていましたが、ジェニーがタムとの恋を通じて少女から女性として成長していく姿がメインに描かれている為、ファンタジー要素よりも少女の成長物語と歴史ロマンスの色彩が鮮やかかと。身分の高い男性との縁談がもたらす自分や周囲への影響、正体もわからないのに何故か惹かれてしまう青年の存在。主人公ジェニーの心の動きがスコットランドの季節の移り変わりと共に語られています。
実在の人物と絡んでくる話なので歴史的背景を知っているとよりいっそう楽しめるようにも感じますが、歴史的な大事件が出てくる訳ではないのでスコットランドの歴史について調べなくてもこの物語を読む分には差し支えはなさそうです。(この物語の時代のごく簡単なスコットランド史はこんな感じ。興味のある方はどうぞ)
もうひとりの中心人物、ジェニーの異母姉のイザベルの物語はバラッドの終った時点から始まります。
父親の館に現れた騎士に誘惑されて駆け落ちしたイザベルはひとりで家に戻って来るのですが、その詳しい事情は語られず、彼女の身に何が起こったのかは随分後になるまで明らかにされません。貴族の令嬢として不名誉な立場に追い込まれた彼女の身はどうなるのか、そしてイザベルに救いの道はあるのかどうかも読みどころのひとつ。
スコットランド中世の人々の暮らしが丁寧に描かれていてとても面白かったです。ジェニーの乳母Galieneをはじめとして、活き活きと書き込まれている脇役達も良かったですね。美しい自然描写も秀逸で、特に森を描いたシーンが素敵。
魅力的な部分は多々ありますが、何よりもふたりの少女が自分の幸せを勝ち取るまでの物語として楽しみました。女の子が頑張る話がお好きな方にはお薦め。
著者のサイトの作品ページはこちらから。未出版のプロローグなど興味深いコンテンツが色々あります。
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