キム・ニューマン


ドラキュラ紀元 梶元靖子 訳・創元推理文庫 刊
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ヴァン・ヘルシング博士を打ち破ったドラキュラ伯爵はヴィクトリア女王と結婚、 プリンス・コンソートとして英国支配の実権を握っていた。国民が次々と吸血鬼へと転化していく中、 ロンドンのホワイトチャペルでは吸血鬼の娼婦ばかりを狙う殺人事件が起こる。闇内閣からの命を受けた諜報員ボウルガードは、 この事件の真相を探るべく調査を開始。
一方、ドラキュラとは異なる血統のヴァンパイア、ジュヌヴィエーヴも事件に関わっていき…。


かの有名な「吸血鬼ドラキュラ」の続編にして、吸血鬼版切り裂きジャックの物語。 騙される快感が味わえるので、虚実ないまぜの物語って大好きなんですよ。 作者の創作したエピソードと史実がうまく絡み合った作品は元ネタを知っていれば倍以上楽しいし、 元ネタを知らなくてもその作品に触発されて色々調べてみたりしませんか?そういった魅力ある作品ってたくさんありますよね。 この小説もそんな作品のひとつだと思います。
さてこの作品、何が良いってジュヌヴィエーヴでしょう。外見16歳、実年齢は400余歳(ジャンヌ・ダルクと同時代人)の ギャップがいいんだなぁ〜。やっぱりヴァンパイア物には永遠の美少女が不可欠よね!(なんか違う…)
文庫にして600ページ以上の分厚いこの本、実在・架空の人物が入り乱れての活躍でヴァンパイア物は勿論、 ミステリや冒険物、英文学に詳しい方なら思わずニヤリとさせられる様なキャラクターの使い方がなされています。 巻末に登場人物事典が掲載されていて、これだけめくってみてもキャストの豪華さが伺われますし。 この小説を書くのは大変だったでしょうが、それ以上に楽しかっただろうなぁ、作者(笑)。
なんたって、闇内閣の上層部にマイクロフト・ホームズですぜ!弟の名探偵は出てきませんが、ライヴァルは御出演だし。 犯罪界のナポレオンと呼ばれたあの「教授」ですよ!名前を出さない所がまた心憎いね〜。
続編の「ドラキュラ戦記」では舞台が第一次大戦中のドイツに移るそうな。またとんでもない話が繰り広げられているのでしょう。

(2003/03/07)


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